札幌地方裁判所 昭和50年(ワ)3011号 判決 1976年3月19日
原告
今泉光善
右訴訟代理人
宮永廣
被告
飛田修
同
近藤育雄
同
日高建装株式会社
右代表者
小林信夫
主文
被告らは、各自原告に対し、金一、四五八、〇〇〇円、および、うち金一、三二八、〇〇〇円に対する昭和四九年三月一五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用はこれを五分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。
この判決は第一項にかぎり、被告らに対しそれぞれ仮に執行することができる。
事実《省略》
理由
一本件事故の発生
請求原因(一)の事実は、原告と被告飛田との間で争いがなく、原告とその余の被告との間においては、<証拠>によりこれを認めることができ右認定を左右するに足る証拠はない。
二被告らの責任原因
請求原因(二)1の事実は、原告と被告飛田との間で争いがなく、また、被告近藤が、本件加害車の所有者であることについては原告と同被告との間で争いがないから、反証がない限り、被告近藤は、右車輛の運行供用者であるものと推認することができる。ついで被告会社は、その責任原因を争うので検討するに、<証拠>を総合すると、被告会社は、昭和四九年三月一九日設立された会社であるが本件事故発生当時にはまだ設立中であつて、被告会社代表者、および被告近藤らは、その発起人として、設立に関与し、被告近藤は、設立後被告会社の取締役となつていること、被告近藤は、被告会社の設立中から、これと同一の事務所を使用し、すでに設立後の被告会社名のある名刺を使用したほか、被告会社の名で営業を継続し、被告会社においてこれを黙認していたこと、そして、本件事故後、その損害賠償について原告と交渉するに際しても、被告近藤は被告会社の名において、原告が入院する病院や原告が勤務する会社と交渉しており、被告会社においても右事実を知悉していたこと、被告飛田は被告近藤に使用され、かつ本件加害車は被告近藤の所有にかかるものであつたが、本件事故発生時まで、被告飛田が運転して、被告会社のために使用したことも数度に及び、さらに本件事故直後の昭和四九年三月二六日にはその車体に被告会社の名称を掲げるに至つていること、以上の事実が認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。
そして以上のような、被告近藤と被告会社との一体的な関係に従えば、本件事故発生当時設立中であつた被告会社は、実質的に本件加害車を自己のため運行の用に供していたものと認められるから、自賠法第三条により本件事故により原告が被つた損害を賠償する義務があり、この義務は、成立後の被告会社に、当然に帰属したものと解される。
してみると、被告飛田は、民法第七〇九条により、また、被告近藤、および、被告会社は自賠法三条により、原告の被つた次の損害を賠償すべきこととなる。
三損害
(一) 治療関係費 金六七五、九四〇円
<証拠>によれば、原告主張関係費の冒頭の入・通院治療の経過事実が認められ、この反証はない。
(イ) 治療費
<証拠>によれば、原告は、治療費として金六〇二、一四〇円を要したことが認められ、これを左右する証拠はない。
(ロ) 入院雑費
前示の入院期間中、原告が入院雑費として当初九〇日間一日につき金五〇〇円、その後も一日につき金三〇〇円を要したものと認めるのが相当であるから、右は金五五、五〇〇円となる。
(ハ) 通院交通費
前示のとおり原告の通院回数六一回であり、また弁論の全趣旨によれば、一回につき金三〇〇円のバス賃を要したものと認められ、この反証はないから、その合計は、金一八、三〇〇円となる。
(ニ) 休業損害 金一、〇四九、七六〇円
<証拠>を総合すると、原告は本件事故当時ホクシン交通株式会社に運転手として勤務し、昭和四八年には平均日額賃金、金六、五六一円を得ていたところ、本件受傷のため事故当日から昭和四九年八月二〇日まで休業を余儀なくされ、少くとも一日につき、右日額賃金を下らない収入を得られなかつたものと認められ、これを覆えすに足る証拠はない。そうすると、休業損害金は、合計金一、〇四九、七六〇円となる。
(三) 慰謝料 金七〇〇、〇〇〇円
本件事故の態様、原告の傷害と入・通院治療の経過、その他本件にあらわれた一切の事情を考慮すれば、原告の本件事故による精神的、肉体的苦痛は、金七〇〇、〇〇〇円で慰謝されるが相当であると認められる。
(四) 損害の填補 金一、〇九六、九〇八円
本件事故に関し、原告が既に填補を受けた損害額が合計金一、〇九六、九〇八円であることは当事者間に争いがないので、これを、以上の合計額から控除すると、右は金一、三二八、〇〇〇円(ただし金一、〇〇〇円未満切捨て)。
(五) 弁護士費用 金一三〇、〇〇〇円
原告が本件訴訟を委任し、弁護士費用金二二〇、〇〇〇円を負担するに至つていることは、弁論の全趣旨により明らかであるが、本件事案の難易、訴訟の経過、認容額、その他本件における諸々の事情を勘案すると、右のうち金一三〇、〇〇〇円をもつて本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。
四結論
よつて、原告の本訴請求は、被告らに対し各自金一、四五八、〇〇〇円、および、うち弁護士費用を除く金一、三二八、〇〇〇円に対する不法行為の日の翌日である昭和四九年三月一五日から完済に至るまで、民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言について同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。 (稲垣喬)